イクメン作家と恋心。初期版2巻(修正済み)
「何で謝るんだよ?」
「だ、だって……。
本当の親子ではありませんし…」
本来ならこの場所は、
奥さんが居るはずだった。
それを私が勝手に入り込んだから
複雑なのだろう。
するとデジカメの電源を切りながら
「俺が言いたいのは、そういう事ではない。
いいのではないか?
親子に見えた方が…お互い楽しそうで」
そう言ってカバンに入れた。
えっ……?
「ほら。次行くぞ。次。
早く回らないと日が暮れる」
先生は、そう言うと車椅子を押してきた。
「は、はい。」
なら、どういう意味なのだろうか?
先生は、私と睦月君が親子に見えるのは、
嫌ではないという事かしら?
じゃあ先生は……?
不思議に思いながら
あちらこちらに行き楽しんだ。
たくさん乗れたし水族館にも行けた。
夜のディナーも凄く美味しかったし
こんなに楽しんだのは、いつぶりだろうか?
帰り道。
あまりにも遊び疲れて
私も睦月君も車の中で眠ってしまった。
夢の中でもペンギンランドの夢を見る。
しかしそばに居るのは、私ではない。
先生と睦月君と……そして奥さんだった。
絵に描いたような幸せそうな家族の光景。
私は、遠くから……それを見ているだけ
これが本来あるべき姿なのだろう。
だから余計に悲しかった。
私が望む光景は……幻に思えて
「……おい。涼花」
遠くから先生の声が聞こえてくる。
これも……幻?
「起きろ!!涼花」
ハッと驚いて目が覚めた。