イクメン作家と恋心。初期版2巻(修正済み)

他の写真だと嫌らしい。

「他にもあるよ?
ほら、このホテルで撮った写真とか」

しかし睦月君は、首を縦に振らない。

どうしてもこの写真がいいらしい。

困ったわ。
あ、でも同じ写真が先生のデジカメのデータに
残っているはず。

「同じ写真なら先生に
もう1枚プリントアウトして貰うから。
それをあげるから」

しかし睦月君は、首を横に振るう。

えぇ……同じなのに!?
何かこだわりでもあるのかしら?

まぁ、私の分は、また先生に頼めばいいか……。

「分かったわ。それ睦月君にあげる」

諦めてあげる事にした。
私は、あの写真ならどちらでもいいし

すると睦月君は、

「……ありがとう」

そう言うと写真を持ったまま
リビングに置いてある本棚に駆け寄って行く。

そしてゴソゴソと下の本棚から
何かを取り出していた。

「睦月君……?」

睦月君にしたら大きな本を抱えて持ってきた。
よく見るとアルバムだった。

アルバム……?

私のそばに持って来ると広げ始める。

藤崎家のアルバム。
めくるページには、小さな睦月君と
先生の思い出の写真がいっぱい写っていた。

そして最後のページに来ると
あの写真を貼り付ける睦月君。

私と一緒に写っているだけなのに……。
まるで、家族の一員になった気分になった。

ドクッと心臓が高鳴った。

「睦月君……ダメだよ。そこに貼ったら……」

家族だと勘違いしちゃう。

睦月君は、不思議そうに
こちらを見ると首を傾げる。

「それは、睦月君とパパとママの思い出の
アルバムだから他人の私が入ったら……」

「……何で?お姉ちゃん。もう家族でしょ?」

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