イクメン作家と恋心。初期版2巻(修正済み)
しかし睦月君は、首を横に振るう。
スポッと中に入れると
何事も無かったように右手を出してきた。
手を繋いで帰ろうと合図をしてきた。
いや……しかし。
手提げカバンから子猫の鳴き声がする。
これは、叱ってでも
置いて行くべきなのかも知れない。
だが…身体を震わしている子猫が頭の中で
思い浮かぶ。
捨てるなんて……出来ない。
「拾ったのではないわ。
たまたま…睦月君のカバンの中に
入ってしまったのよ」
無理やりな言い訳を考える。
そしてマンションの中まで連れて来てしまった。
バレませんよーに。
とりあえず睦月君の部屋に隠そう。
食べ物は、後でこっそり持って来て
食べさせればいいわよね。
エレベータで上がり部屋まで行くと先生が
ドアを開けて待っていてくれた。
すると睦月君は、私の手を離して
先生の所に駆け寄って行く。
あんまり振ると子猫が目を回すわよ!?
いつものように先生に抱っこしてもらう。
「お帰り」
先生がそう言った瞬間
「ニャー」
子猫が鳴いてしまった。
あっ!?
「ニャー……?」
や、ヤバい。
先生に聞かれてしまった……。
「ニャー」
睦月君が猫の鳴き真似をする。
な、ナイス!!睦月君。
「睦月君。鳴き真似上手ねぇ~凄いわ。
い、今幼稚園で動物の鳴き真似をするのが
流行っているみたいなんです」
私も必死にフォローする。