イクメン作家と恋心。初期版2巻(修正済み)
ありがとう…お母さん。
私を信じて自由にさせてくれて
心の中で感謝した。
「行っちゃいましたね…」
やっぱりうるさかったけど
行ってしまうと寂しくなってしまう。
母親だから、なおさらだ。
すると先生は、ため息混じりに
「まったく。お前のせいで余計な気遣いをした。
仕事も立て込んでるのに…いい迷惑だ!」
ブツブツと文句を言いながら
歩いて行ってしまう。
「あ、そんな事を言わずに待って下さいよ~」
慌てて睦月君の手を繋ぎ追いかけた。
先生は、素直ではないけど
何やかんやと言いながらも優しい。
ちゃんと母をもてなしてくれた。
車を乗り込み帰る時に先生にお礼を言った。
「母のこと……ありがとうございました」
「別に……大した事はしていない。
だから、お礼を言う必要はないが?」
ぶっきらぼうに運転をしながら言う先生だった。
「いえ、お陰で助かりました。
母もお礼を言っていました。
ありがとうございますって…でも、どうして?
あんなに嫌がっているように見えたのに」
どうしてだろうか?
すると急に黙ったまま運転する先生だった。
あれ?
聞いたらダメな事だったのかしら?
謝るべきかオロオロしていたら
「……別に。せっかく母親が
お前に会いに来たんだ。
なら、その会える時間を大切にするべきだと
思ったからだ」
先生は、真っ直ぐ前を向いたまま
そう言ってきた。
そうか……。
先生のお母様は、幼い頃に離婚して
離れ離れだったわ。
だから、会える時間を大切にしろと
思ってくれたのだろう。
奥さんもそうだけど……いつどうなるか分からない。
寂しさを知っているから…なおさらだ。