イクメン作家と恋心。初期版2巻(修正済み)
バレンタイン事件…?
一生懸命押してくる睦月君には、
悪いけどその話を立ち聞きしてしまう。
ダメだと分かっているのに…身体が動かない。
「そりゃあ、忘れろと言う方が無理じゃねぇ?
沙織ちゃん。藤崎が他の女性から貰った
大量のチョコを1人で全部完食しちゃうんだぜ?
しかも、誤って自分が渡すはずだったチョコまで
食べちゃって…もう大爆笑でさ」
浜野さんは、思い出し笑った。
「あれは…沙織のヤキモチでした行動だ。
まぁ、本気で全部食べきるとは…思わなかったが」
「でもさ、明らかに途中で
藤崎の事を忘れてチョコに夢中になってたぜ。
『このチョコ美味しい~』とか言ってたし。
沙織ちゃんって見た目は、上品なお嬢様っぽいけど
ちょっと抜けていたよな。
また、そこが可愛らしかったけど」
「……まぁな。アイツの大食と行動には、
よく驚かされたもんだ」
そう言った先生の声は、何だか優しい声だった。
とても可愛らしい奥さんだったのだろう。
「…………。」
2人の会話を聞いていても分かる。
仲のいい夫婦だったのだろうと…それもそうよね。
先生と奥さんだもの。
泣きたい気持ちを我慢しながら下を向くと
えっ……!?
私を押していたはずの睦月君が
涙をポロポロと溢れて泣いていた。
「ちょっ睦月君!?」
私は、驚いて声を出してしまう。
すると先生と浜野さんが声に気づかれてしまった。
あ、気づかれちゃった!?
「あ、やべぇー聞かれちゃった!?」
「お前らそこで何をしているんだ!?」
リビングから出てくる。
私は、動揺しながらも泣いている
睦月君を慌てて抱き上げた。
「あ、あの…盗み聞きするつもりは
なかったのですが…」