ためいきのセレナーデ

深夜のカーチェイス

以前20代大学講師と付き合っていた時の事。

研究室から帰るのは深夜だったから、彼の自宅で待ち合わせてデートして帰っていた私は、原チャでルンルン気分だった。

原チャを1台追い越しウィンカーを右に出した時、後続の原チャが私を追い越し、信号を右折した。

暫く走るとその原チャは右のマンションの駐車場に停めた。

(あそこのマンションの人なんだ…)

そう思い、私が直進していたら、いきなりその人物が前に飛び出した。

キキーーッ!

『危ないじゃないか!』

ライトに目がパッチリとして睫の長い色白のオジさんが照らし出された。

(気持ち悪い)

「すみません…」

私は謝りまった。

すると、やにわに男が両手を突き出し、はおった上着の下に隠した、ノーブラでキャミソールの私のFカップの胸をわし掴みにしてワシワシと揉んだ!

一瞬自分に起きた事が理解できませんでした。

「や…やめて下さい!」

ハッとした。

私の左側は空き地で男が私の原チャをよぎる理由等なかった。

男はさっきの道で私に追い越された時、若い女性だと知ったからか、腹がたったのか、風でオッパイが揺れていたからか、胸の谷間が見えたのか、初めから痴漢するつもりだったに違いない。

私が男の停めた原チャの方を向くと、男はやっと私の私のワシ掴みにしたオッパイから手を離した。

私は原チャにライトをあてた。

ナンバーを見るつもりで。

気づいた男が慌てて原チャに乗り、逃走をはかった。

私は何とかしてナンバーを見ようと追い掛けた。

男は私を振り切ろうと途中でUターンを繰り返し、路地の端から端まで猛スピードで走った。

その度私も体を倒して華麗に地面を蹴り、方向を変え、男の後ろを追い掛けた。

深夜の静かな住宅街で私と男の激しいカーチェイスがくり広げられていた。

男は私がそんなにも諦めずに追い掛ける物だからかなり本気で逃げていたが、ついにライトを消して右折して暴走した。

悔しいが私はそこで追跡を諦めた。

追い掛ける自信がなかったんじゃない。

男が誰かを事故に巻き込み、怪我人が出ると思ったからだ。
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