ためいきのセレナーデ
『痛っ……!!

何しやがる!』

「アンタが悪いのよ!
どきなさいよ!」

私はテーブルにあったボールペンの先でコイツの手を刺したのだ。

当たり前の正当防衛だと思っている。

一応その前に意思確認したのだし。

私は無事に帰れた。

二度と来るまいと誓って。

コイツは酔うと記憶が無くなるヤツで、明け方電話したらロレツが回っていない事がほとんど。

『お前のソプラノは綺麗だ。

俺の好きな歌い手と張り合ってる』

と暗いうちからラテンの国の鳥が鳴くようなソプラノの歌を電話越しに聞かされる。

ある日等録音して、シラフの時に聞かせてやったら平謝りだった。

しかしコイツはアキラメの悪いヤツだったのだ。
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