ためいきのセレナーデ
ある朝電話がまたかかってきて、淋しくて死にそうだと、私に来て欲しいと懇願した。

前の事があるから行かないと言ったら、もうあんな事しないし、往復のタクシー代を出すし、顔だけ出してくれたらと泣きつかれた。

私は行ってやった。

コイツは性懲りのないヤツだった。

またもや迫ってきたのだ。

『お前もケチやな。
彼氏にはタダでやらせるくせに!』

「は?当たり前やろ!

アンタとなんか誰がやるか!

好きな男でもないのに、どうしてもやりたいなら金を積め!」

『何を!』

「車代出しなさいよ!」

『やらせてもくれないのに誰がやるか!』

「クズ!」

私はテーブルの下にあった刃物を抜き構えた。

『やめろ!』

「私を離せ!
やりたくもないヤツにやられる位ならオマエを刺してやる!」

私は刃物をしっかり構えた。

『わ、悪かった!

落ち着け!

お前は口だけじゃない、本気で物を言う女だとわかってるから!』

「誰がアンタなんかもう信用するか!」

やっとどいたので、私は刃物を向けたまま入り口まで後ずさった。

戸に手をかけ、身を翻してすごい勢いで階段を駆け降り、出口から飛び出した。

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