〜愛が届かない〜

体を重ねた朝、駅まで送ってくれた男は『またな』と言って自分の連絡先を教えずに帰っていった。

付き合おうとか
好きだとか、言われた訳じゃない。

私達の関係は、セフレなんだと彼の態度が教えてくれている。

そうよ。
やっぱり、彼も今までの男と同じ。

恋人らしい雰囲気も女をその気にする為の彼の手立てなんだ…お互い満足したのだから忘れよう。

そう思うことで、恋に落ちた自分をごまかしていた。

スマホを眺め

画面は点滅もついていないのに暇さえあればメールを確認したり、着信を確認したり…

突然鳴る電話に飛びついて慌てて出れば、待ち人じゃないことにがっかりして…

仕事場と家の往復をする毎日。

たまに、柚月から近状報告を受け、溝口さんのことを悠さんに聞き出して貰おうと頭の中を過るけど…そんなこと聞いたりしたらあの日のことを話さないといけなくなるから思い留まる。

かかっても来ない電話に嫌気がさし、私は同僚に誘われ合コンに参加することにした。

中心街にある飲食店が多く並ぶダイニングバーの一つ。

テーブルを挟んで5対5の合コン。

ふとした瞬間、溝口さんのことを思い出して目の前の男と比べたりするけど…それなりに楽しんでいた。

「ねぇ…楓ちゃん。このまま2人だけで二次会しない⁈」

顔もそこそこいいし、彼女募集中って言ってたよね。

「えー、2人だけで何するんですか⁈」

男の肩に寄りかかり上目遣いで見つめる。

ゴクンと喉が鳴る男。

視線が開いた襟ぐりを見ているのがバレバレ。

そう仕向けているんだけど…

「…楓ちゃんをもっと知りたいんだ」

うん…まあまあの答えね。

「…どうしよう⁈…お手洗いでお化粧直してきていいですか?」

ーーーー
ーー

同僚に視線を送りパウダールームの鏡の前でメイクを直しながら

「どうするの?」

「えー、どうしようかなぁ⁈素敵な人だと思うけど…なんかね…2人きりイコール、エッチでしょう。しばらくそういうのしたくないんだよね」

「適当にごまかして帰ろうかなぁ⁈」

「楓が、狙った男とエッチしたくないなんて初めて聞いたわ」

「なによ。私だっていろいろ考えているんだけど…誰でもいい訳じゃないし、彼氏ほしいもん」

「それなら、彼、楓のこと気に入ったみたいだし付き合ってみたら」

「そうなんだけど…ね」

「なに…他に気になる男がいるんだ⁈」

頭から離れない男…溝口 晃平
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