〜愛が届かない〜
誘惑は拒めない
いつあるかわからない男からの連絡を待って…
毎日、眠りにつくまでスマホを手放せなくなった。
こんなことするなんて始めてで、明るく光らないスマホを見つめ、暗い画面に映る自分に苦笑する。
そこに映る私は、愛しい人からの連絡を心待ちする恋する女の顔だから…
連絡が来なければ、悲しくて…待つ時間が苦しくて男を思って頬を涙が濡らす。
連絡が来ると、頬を染めドキドキして…待っていた苦しみも忘れてしまう。
連絡一つで一喜一憂する有様だ。
そして…今日も鳴らないスマホをポケットに忍ばせ連絡を待っている。
スマホを見ては
ため息をつき…
私、なにやってるんだろ…と自嘲して
光らない画面とにらめっこして…
仕事からの帰り道
もう少しで家だという時に
待っていた電話が鳴る。
だけど…ワンコールでなんて出てやらない。
待っていたなんて思われたくないから、コール5回を数えて
深呼吸して
咳ばらいしてから
「もしもし…」
『今からコンフォルトに来いよ』
「……もう、家なんだけど」
ツンケンする言葉と反対に心はウキウキになって来た道を戻り始めた。
『なら、やめるか⁈』
意地悪な奴。
わかっているくせに
「行く。溝口さんの奢りだからね」
『クックク…お前に金なんて出させないよ。気をつけて来いよ…駅で待ってる』
その言葉だけで
うれしくて胸がきゅんと高鳴る。
待っていた事も忘れ、軽い足取りで彼の元へ向かった。