〜愛が届かない〜
継続中
合コンに参加したあの日
偶然会ってから、月に1、2度のペースで会うようになって半年。
こうして呼ばれれば喜んで会いに行ってしまう。
私ってゲンキン…
電車から降りて改札口を出ると愛しい彼が笑顔で出迎えてくれる。
「楓…」
彼が私の名を呼べば、遠巻きに彼を見ていた視線が私に突き刺さる。
こうやって視線を浴びるのにも慣れてきた。
彼を独占できる優越感。
ゆっくりと歩き、彼の前に立つ。
「いつも急なんだけど、こっちの都合も考えてよね」
「用があるなら断ればいいだろう」
「……」
意地悪な奴。
「ほら…行くぞ」
手を差し出し、私が手を繋ぐのを待っている。
「手を繋ぐの?」
うれしい癖になぜと疑問をぶつける。
「…さっきからジロジロ見られてて面倒なんだよ」
ぶっきらぼうに言うと私の手を取り歩き出した。
彼の背を見ながら頬が緩む。
熱い視線を送る彼女達を無視して
こうして私を選んでくれるなら…
女よけでもいいと思ってしまう。
【コンフォルト】
溝口さんが事前に席の予約してくれているのか…案内されるのはいつも隅のボックス席。
背もたれがありゆったりと座れ、隅だから通路を通る人もいないし隣とは壁で見えないから…2人だけの空間ができる。
テーブルを挟んで向こう側にも席があるのに、いつも奥に座らされ通路側が溝口さんが座り横並びになる。
どうして、そう座るのかわかっているから何も言わない。
いつものように飲み物と軽食を頼み、席に店員が運び終わると後は2人だけ…
毎回のことながらたわいもない会話。
「このブルスケッタ美味しい…ワインに合うよ。食べてみたら…」
「あぁ………美味い」
「美味しくてワインなくなっちゃった…お代わりしていい?」
溝口さんは、タバコに火をつけ何度か甘い煙を吐くとそれが合図のように私の肩を抱き、顔を近づけ唇にキスをしてくる。
長い長いキス…お互いに上唇と下唇を交互に重ねるだけのキスだけど…
お互いの纏う香りが混ざり合い、香りを嗅ぐともっと、もっととキスをねだってしまう。
意地悪な唇が離れ
「もう、その辺でやめとけ…真っ赤だ」
頬を撫で意地悪な笑みを浮かべ、私の耳元で
『俺に潰される前に潰れるなよ』
彼が甘く囁く。
一気に身体が火照り鼓動が速くなる。
もう…と睨んでも涼し顏で煙を吹かし灰皿の上でタバコ消した。