〜愛が届かない〜
私の手を握ると…色っぽく微笑みながら私の名を呼び、唇に人差し指を押し当て
「かえで…(キスの)続きする⁈」
断れないのをわかっていて、いつも最終決断を私に委ねる意地悪な奴。
「……」
コクンと頷くのが精一杯。
そして、今日も
愛の言葉もなく
私を知り尽くした男に
甘い官能を何度も与えられ
心も身体も彼に狂わされる。
彼なしではいられないと思うほど、身体を重ねる度に彼に溺れていく。
そして…毎回自己嫌悪に落ちる。
彼の何を知っているの⁈
これは、愛じゃない。
欲望を吐き出しているだけで、愛されている訳じゃないと言い聞かせる。
だから…
彼に会った後は
男は彼だけじゃないと実感したいから…
私は、出会いを求めて夜の街に出る。
だけど…
今日は
柚月と飲みたい気分で連絡するとたまたま、悠さんも飲み会とかで留守らしく出てきてくれた。
待ち合わせ場所は、悠さんにも溝口さんにも会わないように私がいつも利用する一駅向こう側に来てもらった。
「かえで、お待たせ」
「柚月…久しぶりね」
そこから数百メートルの居酒屋へ向かい、席につくとビールに串盛りとシーザサラダ、出し巻き卵をとりあえず頼んだ。
「柚月は、悠さんと上手くいってる?」
頬を染め照れながら頷く柚月。
「……は、って楓は溝口さんと上手くいってないの⁈」
鋭いツッコミ
⁈
「えっ…内緒にしてたのにどうして、溝口さんとのこと知ってるのよ」
「えーだって、初めてコンフォルトに行った次の日の朝、見ちゃったんだよね」
ふふふ
意味ありげに笑う柚月。
「なにを?」
聞かなくてもわかっているけど…確かめずにはいられない。
「腕を組んで、ホテル街の方から歩いて駅に向かう2人を…」
「マジ⁈…それって見たの柚月だけだよね?」
「一緒に見てたよ…話してくれるのずっと待ってたのに言ってくれないんだもん。でも、今日は話してくれるんでしょう?」
「……まぁね。聞いてくれる⁈」
「もちろん」
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あの日の経緯から順番に話していく。現在の私達の関係についても…
「それって、付き合ってるの?」
「わかんない。言われてないもん」
「なにそれ⁈わけわかんないんだけど…」
そりゃそうでしょうよ。
私だってわかんないもの。
「私のこと恋愛音痴って言ってたけど…楓もじゃないの⁈」
「どこがよ⁈」