〜愛が届かない〜
「だって、その合コンした日に偶然とはいえ一ヶ月ぶりぐらいに顔を合わせたんだよね。楓のこと気にしてなかったらトイレで待ちかまえてないでしょう⁈それでもって連れ帰るなんて、彼氏じゃなかったらしないんじゃないの⁈」
「そうかな⁈ただ、他の男に媚びているのが許せなかっただけだと思うんだよね」
「そうかな⁈聞いてると嫉妬しているようにしか聞こえないんだけどなぁ!でも、会う回数が月に、1、2度ってのもね⁈今は、電話番号知っているんだから楓から会いたいって連絡すればいいじゃん」
「人のことなら簡単に言えるわよ…自分の時は、どうだった⁈」
私の切り返しに苦笑いの柚月…
「本気になると臆病になるのよね」
「そうよね…」
しみじみと相づちを打つようにつぶやいてくれる。
「……」
はぁ〜とため息が出て
「結局、私達の関係ってセフレだよね」
「……⁈」
驚き顏の柚月…そして背後から聞き覚えのある声
「なんの話しているの?」
「悠…飲み会は⁈」
「うん…ここでしてたんだ」
ストンと柚月の横に座る悠さんと同時に私の横にも座る人の気配。
「今日は、女2人なんだな」
私の頭を撫でる大きな手と甘い香り、そしてこの声は…やっぱり
「溝口さん⁈」
「偶然だな…」
本当にそう思う⁈
「もう、飲み会終わったの?」
「トイレに立った時に柚月達を見つけたから早々に溝口さんと抜けてきた」
抜けてきたと指差す方向は、お座敷があり障子戸になっているから気づかなかったが、男女数人がいるようだ。
「女の人がいるって聞いてない」
柚月がお怒りだ。
「言ったら怒るだろう…最初から俺と溝口さんは女の子を呼ぶ餌だったの。用無しになったから愛しの柚月ちゃんの元に飛んできたんだけど…飲みに出るって聞いてないよ」
あらあら…
「目の前でいちゃつかないでよね」
「楓ちゃん、話の途中みたいだけど、柚月連れて帰っていい⁈」
いい⁈って聞く前にもう手を繋いで立ってますけどね…
柚月は、おろおろして…でも、目の前に溝口さんがいるしで何も言えないようだ。
2人を見送り気まずい雰囲気に耐えられなくて席を立った。
「帰るのか⁈」
「うん…柚月も帰った事だし、溝口さんは私に構わずに戻ってあげたら⁈」
溝口さんから視線をお座敷に移せば、何のことかわかったはず。
障子戸を開けてこちらを見ている女の人と視線が合い睨まれている。