〜愛が届かない〜
「それって…俺としてもいいってこと?」
「えーと、何のことですか?」
とぼけたふりをして、更に男の肩に顔を預ける。
「…今から送って行こうか⁈」
私の肩を抱く手のひらに力が入る。
その時…
「お話中悪いけど…こいつはあんたじゃ役不足だよ。俺が送って行くんで…失礼します」
「えっ…どうして⁈」
誓ったはずなのに…目の前にいる。
男の手を払いのけ私の腕を掴んむ男に、
私を口説いていた男も彼を知っている同僚もあ然として見ていたけど…
「あっ、楓のかばん」
同僚が数メートル先を歩く溝口さんをめがけて投げ彼はそれを受け取った。
何が起こっているのかわからずスローモーションのようにそれを見ているだけの私。
腕を引っ張られ店を出るとタクシーを止めて車中に押し込められる。
また…1人⁈
振り返ると溝口さんも横に乗り込んで来て…彼が怒っているとも知らずに心の奥で喜んでいる私。
「ホテル街までお願いします」
私を引き寄せキスをしてくる。
タクシーの中だというのに…久しぶりの彼の温もりに酔う。
だけど…荒々しく唇を重ねられ呼吸もままならない。
「……んっ……んっ…………ぁ」
しだいに唇を舌でこじ開け舌を絡め口腔内を舌が弄りキスだけで私の意識を虚ろにし…耳朶を舐め耳腔に舌先を入れ淫猥な音をワザと立て羞恥心を煽る。
「……やぁっ…あっ………や、耳、止めて…」
タクシーがホテルに着くまで続いた。
…ぎゅっと手首を掴みエレベーターの中でも続くキス。
部屋の中に入った瞬間、抱きしめられ荒々しく唇を貪る彼に私はおかしくなる。
ベッドの上で服も脱がさずにたくし上げて肌を露出し、彼の唇と舌が肌を這う…彼の指がショーツにかかり脱がされれば私の身体を熟知した男に攻め立てられ何度も意識を飛ばしにかかる。
だけど…『罰だ』と言っていかせてもらえない苦しさに涙があるれる。
なぜ⁇
何が罰なの⁇
ただのセフレなのに…
あなたが怒る理由はなんなの⁇
初めて見る男の怒りの感情に
恐いというより喜びに満ち私の身体はいつも以上に感じている。
いけない苦しさも麻痺し
手を伸ばし彼の体を抱きしめ
愛しい人の熱を受け取った。
息を整えながら涙でグチャグチャになった私の顔を撫で涙を拭ってくれる男。
「乱暴にして悪かった」
その一言だけで嬉しさが倍増する。
「今度は、いつものように優しく抱いて…」
唇を重ね、また…堕ちていく。