〜愛が届かない〜
誘惑には惑わされない

もう、会わない

そう誓っても、偶然会ってしまえば嬉しくて…

彼に会うと心も身体も高揚して…

彼を求めてしまう。

触れてほしくて
触れたくて

重ねてしまう身体。

「連絡してるのに無視るなよ」

「…ごめん」

「電話したら出ろって…」

頭を撫で優しく見つめるから

「うん」

頷いてしまう。
彼の腕の中で誓いを破る優柔不断な自分が憎い。

恋人同士なら心も身体も通じているのに
…私達は恋人同士じゃないから、身体を重ねるしかあなたを感じられない。

そうやって言い訳して
どうしてあそこにいたのかも…
なぜ怒っていたのかも…
連れ去った理由さえも…恋人同士じゃないから聞けない。

「なぁ…俺たち会うのいつも夜だよな」

「溝口さんと私のお休み違うものね」

「だな…今度、休み取るからドライブでも行くか?」

いつものように吸っていた甘い香りのタバコを消して優しく微笑んでいる。

えっ…聞き間違いじゃないよね。

「……いいの?」

「なかなか会えないからそのお詫びだ。だから、他の男に媚びるなよ」

そう言って、独占欲を見せられると勘違いしてしまうよ。

そんな言葉より今は、
会いたかった
愛してる
好きだ

なんでもいいの…
愛されてるしるしがほしい。

どんどん欲張りになっていく…

そのうち
彼女でもないのに…
きっと私は、あなたを独占したくなる。

好きって言って
愛してるって囁いて
私だけを見て…

心の奥から割り切れない私が出てきて、あなたに幻滅される時が来るその前に
離れなくっちゃ…

いつまでもあなたの思い出の中にいたい…いつまでも私を覚えていてほしいもの。

だから、その日は最高の思い出にして
もう、二度と会わないわ。
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