〜愛が届かない〜
出会い
彼との出会いは、一年ほど前
*
恋に臆病な親友の柚月をけしかけ、一緒に悠さんの職場(外車を扱うディーラー)に偶然を装い訪ねた時だった。
知り合いでもないのにウィンドウ越しに微笑みと一緒に手を振れば、笑顔を浮かべ手を振り返した男。
その彼が…溝口 晃平
悠さんの提案で4人で飲むことになった場所、【コンフォルト】に柚月と私は先に来ていた。
「では、ご注文お決まりになったらお呼びください」
席を離れていく店員を確認した柚月は、前のめりになり
「楓さん…悠にあの一言を言わせる為にわざわざ下着や服を買ってメイクもしてもらったの⁈」
優しい声色で…
でも、目は笑ってなくて
「なに言われたの?」
今度は、頬を赤くしてボソボソとつぶやいた柚月。
なんとなく聞こえてたけど
「聞こえない」
わさど聞こえない振りをした。
「だから‥今日の私ってかわいすぎって言われた」
ふふふ…
今の柚月には、一番の殺し文句だわ。
今日の柚月が自分に会うためにおしゃれしているってわかっての言葉よね。
でも…
「……そんなことで真っ赤になってたの。てっきり、脱がせたいとか言われたと思ってたわ」
私ならこれくらい言われたいけど、恋愛経験ほぼゼロの柚月には刺激が強いわね。
「そんなこと言ってたら叩いているわよ」
さらに顔を赤くした柚月に睨まれるけどちっとも怖くない。
まだ、何か言いたげの柚月だけど、その背後に立つ2人組の男は、細身のスーツを着こなし男として自信に満ち溢れている。
自分達が、いわゆるイケメンだとわかっているから…振り返る女性客の視線に涼し顏。
「早かったですね」
私は、ちょっと優越感を感じながら彼らに声をかけた。
柚月の隣に当たり前のように座る悠さん。必然的にもう一人の男は私の隣って訳ね。
隣に置いた鞄をずらし
どうぞ…
ありがとう…
という目配せをすると隣に座ろうとする動きに合わせて、甘い香りがほんのり香った。
彼のつける香水⁈
この匂い好きかも…
そんなことを思いながら、彼らにメニューを見せる。
「何、飲みます?」
「君は何にしたの?」
「おふたりが来られるの待ってたんですよ」
彼を見つめ両ひじをテーブルの上について、手を重ねた甲に顎を乗せ微笑む。
「……そう。待っててくれて嬉しいよ。それならメニューを一緒に見よう」