〜愛が届かない〜
私なりに今言える
精一杯の最初で最後の告白。
顎をグイッと持ち上げられて溝口さんと視線が合う。
「今日は、かわいいことをいんだな…」
そう言うと慣れ親しんだ唇が落ちてきて私の唇に触れた。
ただ、触れるだけの優しいキスなのに…
愛されていると感じてしまう。
駐車場の一角で、恋人同士のように腰を抱かれ人の目を気にせずキスをしているのだから…
いつまでも触れていたい。
彼の頬に手を添え‥もっと‥とねだる。
だけど、意地悪く笑みを浮かべると下唇を啄ばみ
「続きは、戻ってからだ」
髪にチュッとキスを落として車に向かう。
初めての彼の行動に頬が赤くなり、顔を上げられないまま彼に続いた。
来た道を1時間かけて戻ると、外はもう真っ暗で高層ビルの間から見える月は雲におおわれ空は濁っている。
だけど、彼が連れてきてくれたお店に入ると高い天井に窓ひとつない空間には辺り一面夜空が映っていた。
「……きれい」
「プラネタリウムみたいだろう⁈」
「うん…ありがとう」
ボーと見惚れている私の手をとり通路を歩き出す。
「暗いから気をつけろよ」
よく見ると大きな段差がいくつもあり、その間に階段がいくつかある。
階段をおりていくとカップルシートとテーブル、小さな灯りが段差の壁に置いてありひとつの空間のようになっていた。
ゆったりとしたシートに座ると溝口さんに肩を抱かれ彼の肩に寄りかかる感じになって、気持ちは恋人気分だ。
そこに、店員らしき人物が『失礼します』と小声で食事を運んで来た。
離れようとすると肩にグッと力が入り動けないから、そのままの体勢。
気にする風でもない店員はピクニックに持っていくようなバスケットを開いた。サンドイッチに唐揚げ、ポテトなどある。
『お飲み物はどうされますか?』
店員が肩からさげるクーラーボックスを開き中を見せるけど…薄暗くて見えない。
「ノンアルコールを2本」
『かしこまりました』
栓を開けテーブルにビンを置くと黙って階段を上がっていく店員。
「私、飲みたかったのに…」
「今日は、飲むな」
「なんで?」
「今日は、酔っていないお前を抱きたいんだよ」
えっ…
ストレートな言葉に動揺している私の顔は真っ赤っかだ。
頬どころか顔中が熱いもの。
「溝口さん……私がお酒に強いの知ってるくせに」
そういうのがいっぱいいっぱい。
「あぁ…酒の力無しでお前に晃平って呼ばせるから覚悟してろよ」