〜愛が届かない〜

彼の手の平と私の手の平を合わせ指を絡ませる。

「俺の部屋に連れてっていいか?」

「いいの?」

「当たり前だ。彼女の特権付きで招待するよ」

数メートル先に止まっている彼の車に乗り、駅裏にあるマンションの中につく。

エレベーターのボタンを押して上昇する個室はガラスになっていて外の景色が見える。

彼の仕事先の看板が明るく光ってる。

「こんな近くに住んでいたの⁈」

「あぁ…ホテルなんかじゃなくて、ずっとここにお前を連れて来たかったよ」

「それなら、どうして…連れて来なかったの⁈」

「それは…妹と住んでいたんだ」

エレベーターが止まり、彼の部屋のドアをガチャンと開ける。

暗い部屋の明かりをつけ奥へと導かれる。

彼は、どさっとソファに座り、自分の膝を叩いて私に上に座るように手招きしている。

突然の恋人関係に戸惑い躊躇いながらも彼の膝の上に横向きに座る。

「今さら照れるなよ」

「当たり前じゃない…恥ずかしくない方がおかしいわよ。ずっと、割り切ったふりして好きな気持ちを隠してきたんだから…こんな恋人同士がするようなこと急にさせるなんて…恥ずかしくて死にそうよ」

「あははは…もっと恥ずかしいことしてるのに…」

「こうへいのバカ…エッチ…」

目を見開き頬を染める男。

「……もう一度言って」



「こうへいのバカ…エッチ」

棒読みする。

「違う…俺の名前だけ呼んで」

改めて呼ばされると恥ずかしいから、視線を外し

「…こうへい」

「かえで…」

「こうへい」

「かえで」

お互いに呼び合い微笑んだ。

上目遣いで熱く見つめる晃平に私は、顔を屈め自ら彼の唇にくちづけをする。

離れる唇を彼の唇が追いかけできて、何度も啄ばみ彼の手が服にかかる。

キスの合間に

「…楓…寝室に行こう」

誘惑する。

抵抗できる訳もなく彼の頭部を抱きしめ

「…連れて行って、晃平でいっぱいにしてほしいの」

可愛くおねだりする。

「…やだって言ってもやめれないからな」

「うん…彼女としてあなたに愛されたいの」

「かわいい奴…」

意地悪く笑うと横抱きのまま立ち上がり
寝室の前で立ち止まる。

「かえでが開けて」

ドアをガチャンと開けると彼とともに奥へと進む。

そして…彼の足でドアがバタンと閉まったと同時にベッドの上で愛され始めた。


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