〜愛が届かない〜

「ちゃんとキスして証明して…」

クスッと笑い少し屈んで唇に甘いくちづけを落として彼は玄関に向かう。

「行ってくるから…いい子で待ってろよ」

「…帰らなくていいの⁈」

「あぁ…それにまだ話すことが残ってる」

ポケットから鍵をとり私の手に乗せる。

「行ってらっしゃいは?」

はにかみながらも幸せを噛み締め

「…晃平、行ってらっしゃい」

彼の頬にキスをして微笑む。

「残念…唇にして欲しかったけど…結婚すれば毎日してもらうから今日は我慢してやるよ……じゃあ、行ってくる」

手を振り、バタンと閉まるドアを見つめ我に返った。


さらっとすごい爆弾を投下していったよね。

結婚すればって言った⁈

にやける頬を押さえ、その場で回る。

この幸せを誰かと共有したくて、真っ先に電話する相手は…

『もしもし』

「柚月、おはよう」

『おはよう…楓。声が少し高いけど…なんかいいことでもあったの⁈」

鋭い…さすが親友。

『あのね…実は今、溝口さんのマンションにいて彼が愛してるって言ってくれたんだ」

『よかったね』

「うん…言葉にするのが怖くて、彼との関係を終わらせようとして悩んでいたけど…終わらなくよかった。よかったよ…」

電話の向こうで半泣きの柚月。

「もう、なんで柚月が泣くの⁈泣かないでよ。私も泣けてきちゃった…」

ポロポロといろいろな感情と一緒に涙が流れていく。

『……楓は、私が悩んでいる時には力になってくれたのに…私は、溝口さんとの関係に苦しんでいる楓の力になってあげれなかった……ごめんね。2人が上手く行ってくれてホッとしたら涙が出ちゃった』

「柚月に相談しなかったのは私だよ。彼を忘れようとして足掻いてみたけど…彼以上の人なんていなかったんだ。今、ものすごく幸せよ」

『うん…楓が幸せになってよかった。悠も、気にしてたから今頃は溝口さんに報告されて喜んでいるかも』

「悠さんにも心配かけてたんだ?」

『…今、思うと悠は、溝口さんの気持ち知ってたみたいだけど、恋愛に口出しするようなタイプじゃないし、策略化だから逆にイライラしてみてたんじゃないかな⁈』

「そうだった…悠さん腹黒だったものね。柚月は、5日で悠さんの手に堕ちたんだった」

『もう…その話はいいよ。溝口さんが帰ってきたらちゃんと話しを聞いてあげるんだよ』

「うん…今さらだけど、彼の気持ち全部知りたい」

『それは、溝口さんも同じだと思うよ』
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