〜愛が届かない〜
「そうかな⁈」
『そうだよ。楓が悩んでいたように溝口さんも悩んでいたはずだもの』
「……えっ、柚月⁈なんて言った?」
『……あはっ、口が滑った。もう…いいよね⁈悠が言うには、溝口さんは、楓との関係に悩んでいたんだって…楓と同じ理由らしいよ。かなりの確率で男といる楓を見かけてたらしいくて、楓のタイプだと思う男といる時は、邪魔されてたでしょう⁈』
「うん」
『後は、溝口さんに聞きなさい』
「ありがとう」
『今度、ダブルデートしよう。それが無理でもまた、4人で食事してもいいし…
2人のアツアツぶりをみたいな』
「もう…柚月たら」
『散々、冷やかされたんだから仕返ししないとね』
「はいはい…じゃあ、またね」
『うん…またね』
晃平も私と同じで悩んでいたの⁈
柚月との電話を切ってから頬が緩みっぱなしだ。
浮かれてる私は、
彼の部屋を掃除して…
彼の服を洗濯して…
彼の為に夕飯の買い出しに出かけて…
御飯を準備して…
あっという間に夜になり、彼の帰りを待っている。
ピンポーンとなるチャイム
「はーい…おかえりなさい」
彼を出迎える。
「……ただいま」
ぎゅっと私を抱きしめて肩に顔を埋める晃平。
「どうしたの⁈」
「いや…楓がいるか心配だった」
「待ってろって言ったの晃平だよ」
彼がしてくれるように彼の頭を撫でる。
「あぁ……だけど1日中不安だった」
「いつも自信満々な癖に…」
「お前に関しては、ずっと、自信なんてなかったんだからな」
「…私だって同じだよ」
「よく言うよ。お前には振り回されっぱなしだったぞ」
「…そんな覚えないわよ。その話は後にして御飯作ったから一緒に食べよう」
「…んっ……」
晃平が唇を押しつけてキスをしてきた。
「……ただいまのキス」
口角を上げ、してやったりと微笑む男は、ぺろっと舌を出しリビングに入っていく。
そんな彼の背を追いかけ
昨日までの自信のない自分にさよなら。
「いい匂い…」
彼がネクタイを外し、スーツの上着を脱ぐと私がハンガーにかけてあげる。
その背後から腰を抱きしめ
「かえで…」
私の大好きな甘い声で名を呼ぶ。
「……」
いつになっても聞きなれない声に頬を染め、彼の腕に手を添える。
「……愛してるよ」
「私も、愛してる」
彼の甘い香りに包まれて
新たな2人の始まりに…心が踊る。