〜愛が届かない〜
「お腹、いっぱい」
「じゃあ、そろそろ出る⁈」
腕時計をチラッと見せて、まだ、時間はあるとわからせたのに
「……そうですね」
と返してくる。
本当に帰るのか⁈
「………今日は、楽しかったです。私、帰り電車なので…おやすみなさい」
遠まわしの拒絶の挨拶だった。
だけど…俺のプライドが許さない。
「夜道は危ないから送って行くよ。あいつにも頼まれたしね」
「……大丈夫ですよ。まだ、電車があるし実家暮らしなので家の人に駅まで迎えに来てもらいますから気にしないでください」
実家暮らしを強調して、完全に俺を拒絶している。
「それじゃ、おやすみなさい」
笑顔で2度目のおやすみなさい。
背を向け俺を置いて行く彼女。
女を置いて帰ることがあっても置いてかれるのは初めてだった。
まだだ…
彼女の目は、俺を拒絶していなかった。
そう思うと、足は無意識に彼女の後を追っていた。
赤信号なのに目の前で飛び出す彼女を背後から抱きしめる。
「危ない」
「……あ、ありがとうございます」
「追いかけて来て正解だったな」
彼女が顔だけで振り向き顔を上げるから、距離がグンと近寄ると間近で見る大きな瞳が踊り、顔にかかる息遣いが大きくなっていく。
ぷっくりとした唇が誘うように少し開き、吸い込まれるように彼女の頭を押さえ唇に軽く触れていた。
彼女の唇に触れ体中にビリッと電流が流れ俺の理性が壊れる。
抵抗しない彼女の唇に触れながら囁く。
「このまま、お前を帰せない…キス以上のこと俺と試してみない⁈」
抵抗しないくせに、誘いにのらない彼女の唇を啄み何度誘惑し、漏れる吐息にもうひと押しと下唇を優しく噛んだ。
潤んだ瞳で
「キス以上って…⁈」
とわかりきった事を聞いてくるから彼女の肩を抱きよせ細い路地に誘う。
彼女の腰を抱きしめると自然と唇を重ねキスに夢中なっていた。
余裕なんてない。
彼女とキスを重ねながら、頭の中では彼女の服を乱し抱いていた。
さすがに、ここで抱くほど俺は鬼畜じゃない。
名残惜しいが、一度、唇を離せば彼女の顔が物足りないというように俺を誘惑する。
「…その顔、エロすぎ。どれだけ夢中なの⁈」
ほのかに紅く染まっる頬を撫で彼女の腫れた唇を触れば…
「あなたに⁈キスに⁈」
「どっちだろう?確かめるからその顔をもっと見せてよ…」
「……あなたしだいよ」
彼女の返しに俺の闘争心に火がついた。
彼女を抱いて俺に夢中にさせるつもりが、俺の方が夢中になって彼女を何度も抱いていた。