〜愛が届かない〜
まぁ、楓の態度から嫉妬するほどの男はいなかったのが救いだったが、今回の相手は違うようだ。
見るからに楓の好みの男。
スポーツマンタイプで爽やか、女にモテるだろう…
楓が頬を染め男に媚びる姿なんて、もう2度と見たくなかった…
俺は、彼女とその男を引き剥がしその場から連れ去った。
認めたくないけど…
俺は、彼女の全てを愛してる。
店員にタクシーを呼んでもらい乗り込むと、俺を無視していた彼女に俺の存在を思い出させようと唇に、耳に触れて俺との甘い時間を忘れたなんて言わせない。
彼女の全てを知り尽くす俺だから…
彼女が欲情するスイッチを押す。
俺の下で頬を染め高揚する彼女。
愛してると言いたい…
だけど、言えない。
身体を重ねるだけの関係なのに…
愛してるといっても彼女は信じないだろう。
恋人同士のようにデートして、愛してると囁けば信じてくれるだろうか?
彼女と約束した日
いつもと何か雰囲気が違う彼女。
気になりながらも、彼女の望み通り水族館へ遠出する。
恋人同士のように手を繋ぎ、館内を順番にまわり、彼女が楽しみにしていたイルカショーを子どものように喜んでいる姿を見て連れて来てよかったと思う。
だが、時折、寂しげな表情をするから心が落ち着かない。
彼女が、何を考えているのか…
言わなくても伝わるからだ。
このまま終わる為に連れてきたわけじゃない。
彼女に触れ、キスをして俺の気持ちが届けばいいのにと願う。
愛してる…
今、ここで言葉にすれば簡単なのかもしれない。
だけど…
今日は特別な日。
彼女と出会った記念日
彼女は気づいているだろうか?
最高の日にしたいから…
タイミングを間違えるわけにはいかないんだ。
彼女が星が好きなのは知っていたから、行きたいと言わなくても今日のデートプランに入っていた。
プラネタリウムを売りにするカップル向けの店を下調べ済み。
そして…
俺たちの関係が始まった初めの場所。
ラブホテルだが、仕切り直すにはそこから始めようと思う。
だから…
ラブホテルなのに俺は事前に予約していた。
いや、違うな…その部屋を1日貸し切った。
壁に映る星を見ながら彼女が泣きだす。
俺の胸で
肩を叩き
泣く理由もわからないと泣く。
彼女が、この関係を終わりにしようとして苦しんで泣いていると俺はわかっていた。