*°春夏タチバナ*°
「お邪魔しました」
「送ってきまーす!」
玄関でそう叫んでから両親が出てくる前に秋くんを連れて家を出た
来る時とは違って、少し手を動かせば触れるような距離で歩く道
暗いからなのか…
ただ秋くんと離れるのが寂しいのか…
私は秋くんにさっきのことを話してもいいかなぁと思ってきた
「あのね、私が両親に言ってたことはね
秋くんってかっこいいのって
私の自慢の……す、好きな人なの…って言ってた」
後半は恥ずかしすぎてモゴモゴと言ったけど
秋くんはちゃんと聞き取ってくれて、立ち止まる
「へ、返事はいらないからねっ?
これは告白じゃないからっ!
好きになってもらえたら…嬉しいって思ってるだけだから…」
振られるのが怖くて
私は秋くんが話す前に言葉を止める
好きとか言って告白じゃないとか矛盾してるけど…
それでも振られるのが怖いから
だからそうやって言い訳して
いつまでも友達としてやり過ごす
卑怯かもしれない
これ以上欲がないといえば嘘になる
でも、この関係が壊れるくらいなら
ずっとこのままがいいの
「いや、返事させて」
「えっ…」
秋くんからまさかの言葉が返ってきて焦る
私が嫌だという前に、秋くんは私と正面から向き合う形になった
怖いなぁ…また振られるのか…
そう思って目をつぶり、秋くんの顔を見ないように言葉を待っていると…