*°春夏タチバナ*°




「夏那?大丈夫?」











そう、ぼーっとしたままの夏那ちゃんの顔をのぞき込んで聞く秋くん




春翔くんは自分の怒りを抑えるので精一杯みたいだからね…






顔をのぞき込まれた夏那ちゃんは驚いたように顔を上げると、ヘラっと笑った




それはもう、今にも泣きそうな顔で…











「だ、大丈夫だよ♪
ご、ごめんね空気悪くしちゃって」





「………夏那、無理しなくていいよ」











夏那ちゃんの強がりに、秋くんが夏那ちゃんの頭をなでた





ちょっとだけ、モヤっとしたけど…
今この状況じゃ仕方ないよね…




春翔くんが慰めれる状況じゃないし…
なによりこれで夏那ちゃんを無視する秋くんは嫌だもん




でもやっぱり秋くんが優しく頭をなでるのは私だけがいい…なんて…







嫉妬なんてみっともない…











「秋……くん…
びっくりした…もう好きじゃないけど
でも、あの時の気持ちがふっと浮かんできて
由に申し訳ないし、春翔にも申し訳なくなった」











夏那ちゃんはそう言うと、静かに涙をこぼした




その泣き方がとても女の子らしくて…
儚くて綺麗で見とれてしまいそうになる











「そっか、でも大丈夫
夏那は何も悪くないから、申し訳ないって思わなくていいんだよ」





「でも…」





「大丈夫、大丈夫」











優しく夏那ちゃんに語りかけながら
秋くんは夏那ちゃんの涙を拭う





それがとてもカップルらしくて少し切なくなっちゃったりして…





春翔くんはどんな気持ちかな?





そう思ってチラッと春翔くんを見たけど、特に気にした様子はない







そっか、これくらい普通なのか!





私もこんなので嫉妬しないようにしなくちゃね…











「ごめんね秋くん」





「いいよ
よし!今日はもう帰ろう!」





「そうだねっ」











だいぶ落ち着いた夏那ちゃんを見て
秋くんがそう言ったのをきっかけに今日はもう帰ることにした






< 172 / 284 >

この作品をシェア

pagetop