*°春夏タチバナ*°
「由、ごめんね
私は春翔が今すごく大切なの
だから、由とは付き合えない」
「頼むよ
何でもするって言っただろ…」
「ごめん…」
泣きたいのは私じゃないのに
何故か涙がこみ上げてきた
由を好きだった私
ずっと忘れれなくて、慰めてくれていた春翔
あの時の私なら間違いなく由を選んでた
でも今は体の一部みたいに
当たり前に春翔が私の中には存在するから
こう言われても尚そんなことを思う
自分の気持ちに泣きそうなのかな?
由の切ない気持ちが伝わってきたのかな?
違う、由のことを想って泣いていたあの時のことを体がまだ覚えていたんだ
だから思い出して泣きそうなんだ…
原因がわかると、涙はとめどなく溢れてくる
もはや私の意思では止められないくらいにぼたぼたと…
抱きしめあっている由の胸が私の涙で濡れていく
「泣いてるのか?」
「っ…泣いて、ないよ…」
そんな私の否定の言葉なんて無視して
由は抱きしめている手を緩めて顔を覗いてきた
私が急いで顔を隠そうとした瞬間
ふっと、柔らかい口づけが落ちてきた
「んっ…」
さっきまでの由とは全然変わって
優しい優しいいつもの由で
あまりにも前と変わらない口づけに、拒むことが出来ない
どうしたの?私は
私の気持ちはどうなってるの?
「夏那、俺はずっと待ってるから」
そしてまた深い口づけをされた
春翔への罪悪感
これは浮気?
私は自分自身の気持ちもわからなくなってしまった
私は一体なにがしたいの…?