*°春夏タチバナ*°
「キスされて、それはあまりにも昔と変わらない優しいキスだったの…
それで思った…あんなに優しかった人をこんな風にしてしまったんだって」
そう言って話す夏那ちゃんは
戸惑いと悲しみが入り交じった顔をしている
「私のせいで由はこんななっちゃった…
おまけに春翔を傷つけて、秋くんまで巻き込んで…私最低だよ」
「夏那ちゃん…」
「多分春翔のあの様子だと
昨日のこと見てたんでしょ?」
「う…うん…」
やっぱりわかるよね
あれだけ春翔くん怖い顔してたもん…
でも多分、春翔くんも怒りたいわけじゃないんだろうなぁ
なんて考えていると、冬貴くんが真剣な顔で話し出した
「なるほど…好きが故に嫌われる人の代表例ですね、その由って先輩」
「き、嫌われるって…」
「んで、恐らくですけど、転校2日でそれだけの情報知ってるとなると
冬羽先輩達意外には人当たり良くしてるんでしょう」
あ、言われてみればクラスの人とかなり仲良さげだもんね
まぁ、元がいい人だから
私たちに対してがただ酷いだけなんだろうけど
「そういうのって結構厄介ですよ
秋先輩はともかく、春翔先輩は男子から不評ですからね…
由先輩的には2人がペアだと面倒だと思うので
これを機に、秋先輩と春翔先輩の仲を引き裂かれるかもしれません」
「そんなっ!」
うそ…
この問題ってそこまで深刻なの…?
驚きすぎて声も出ない様子の夏那ちゃんは
ポカンと冬貴くんを見つめている
「まぁ、ただの俺の予想なのでなんともなく終わるかもですけどね
でも、夏那先輩次第ってのは覚えててください」
「私次第…?」
「はい、夏那先輩がどちらを取るかによって
状況は大きく変わると思います」
冬貴くんはそう言うとニコッと笑った
夏那ちゃん次第かぁ…
きっと夏那ちゃんは由くんをあんなにさせたのは自分のせいだって思いつめちゃうよね…
この先一体どうなるんだろう…