*°春夏タチバナ*°
そこまで言うと由は私の手を握った
「お前は俺を捨てるんだな?」
捨てるなんて本当は辛いよ
前大好きだった人なんだもん
でも、こうしなくちゃお互い幸せになんてなれない
だからごめんね由
「うん、私はそんな由は嫌いだよ」
「………」
「由もそろそろ目覚ましなよ」
「なんだよそれ」
由には私よりいい人がいる
由には由だけを思ってくれる人がそのうち現れるから
だから大丈夫だよ…
そんな気持ちを込めて
私は由の目をしっかりと見つめた
「由が元の優しくて人を思いやれる人に戻らないと
私は二度と話さないから」
「は!?」
「じゃあね由」
そして私は握られていた手を
この苦しい気持ちと一緒に振り払った
さよなら大好きだった人────