*°春夏タチバナ*°
もう始まると言うのに…
いや、既にもう5位の人は発表されたというのに
ステージ裏の控え室にいるはずの秋くんが
なぜ今私の視界にいるのか?
そんなことを考えて、言葉も出ないでいると
秋くんはくすっと笑った
「考えてること顔に出てるよ冬羽
春翔と夏那から冬羽と話すように言われたんだ
まぁ、今はもう行かなくちゃだけど」
夏那ちゃんと春翔くんが…?
「あ、それと、冬貴からは"冬羽先輩を幸せにしなかったら怒りますから"って言われたよ」
「そ、そんな…」
冬貴くん、きっとふられるの分かってるんだ
それで秋くんにそんな事言ってくれて…
本当にすごく素敵な後輩だよ
すごく大好きな後輩だよ
「じゃあ俺行ってくるから
ちゃんとしっかり見ててよね」
「う、うん…
ここで見ておくね」
私の返事を聞くと、秋くんは嬉しそうに笑って
控え室に向かっていった
秋くんがどうしてあんなに普通なのか
そんなのわからないけど
でも大丈夫
私はもう逃げたりしない
逃げる私はおしまいなんだから