*°春夏タチバナ*°
「花火、きれいだね」
花火を見上げて呟く秋くんの横顔がきれいで
改めてすごく整った顔をしてるなぁと思う
そして不意に花火を見つめていた目が
私の方に向いた
「冬羽、楽しかった?」
「うん!すごく楽しかった♪
来てくれてありがとう♪」
そう言って笑いかけたものの
秋くんの鋭い目は私を捉えたまま逸らされない
いつもにない鋭い目に戸惑ってしまう…
「でも、ドタキャンされて嫌だったでしょ?
ムカついたし悲しかったでしょ?」
「えっ…」
「ニコニコしてられるほど冬羽にとっては
どうでもいいことじゃなかったでしょ?
怒ってもいいさ」
「…………。」
どうでもいいことじゃないよ
すごく楽しみにしてたもん
でも、秋くんが来てくれたのに怒るなんて欲張りにも程がある
でも、なんでかな?
涙が出てきちゃった…
「悲しかった…楽しみだった…
でも、仕方ないから…
でもでも本当に秋くんが来てくれて楽しかったよ…?」
そうは言うものの涙は止まってくれない…