*°春夏タチバナ*°




「花火、きれいだね」











花火を見上げて呟く秋くんの横顔がきれいで
改めてすごく整った顔をしてるなぁと思う




そして不意に花火を見つめていた目が
私の方に向いた











「冬羽、楽しかった?」





「うん!すごく楽しかった♪
来てくれてありがとう♪」











そう言って笑いかけたものの
秋くんの鋭い目は私を捉えたまま逸らされない




いつもにない鋭い目に戸惑ってしまう…











「でも、ドタキャンされて嫌だったでしょ?
ムカついたし悲しかったでしょ?」





「えっ…」





「ニコニコしてられるほど冬羽にとっては
どうでもいいことじゃなかったでしょ?
怒ってもいいさ」





「…………。」











どうでもいいことじゃないよ



すごく楽しみにしてたもん
でも、秋くんが来てくれたのに怒るなんて欲張りにも程がある





でも、なんでかな?



涙が出てきちゃった…











「悲しかった…楽しみだった…
でも、仕方ないから…
でもでも本当に秋くんが来てくれて楽しかったよ…?」











そうは言うものの涙は止まってくれない…






< 35 / 284 >

この作品をシェア

pagetop