石田先生、忍者になるの巻
だって手裏剣が投げたいんだもんの巻
五感を研ぎ澄ませろ‼︎いつ何時も気を抜くな‼︎眠っている最中でも、その背を狙われていると思え‼︎夢の中で殺陣を覚えろ。息つく間もなく向かってくる刄をかわせ。かわしてかわして、長の首をかっ切るのだ‼︎それがお前に課せられた宿命であり、使命なのだから。たとえその身が朽ちたとしても、灰となり風に流されるその時まで、己の主を守るのだ。灰となって煙に巻くがいい。煙(けむ)になって、黒い雨を降らせてしまえ。一瞬、ほんの一瞬、敵の陣が崩れれば本望。役目を果たした。ようやく、静かに目を閉じることができるだろう__だが、再び目を覚ませばそこは戦場。忍びは輪廻。どれだけ廻ろうが、巡ってくる運命。それなら刻の泉に身を投げようではないか。この両手を広げ、幾多もの矢を受け入れよう。それが幻術であると気づいたが最期__お前が廻る番なのだから…。
「てかさ、手裏剣は?」
「はい?」
「手裏剣だよ、シュ・リ・ケ・ンっ☆」
秘め事を打ち明ける女(おなご)のように耳元で囁く。
「だって忍者っていったらイコール手裏剣でしょ?」
まるで悪びれることなく女(おなご)__ではなく、このオッさんは言った。
「手裏剣投げたいから忍者になったのにぃー」
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