石田先生、忍者になるの巻
そう、俺がスパイなのさの巻
笑止。変わり身の術はなにも、壁(へき)や樹木だけではない。敵の懐に忍び込み、自らを忠誠心の塊と化すのだ。まさかこの私が、敵地から赴いたとは思いもよるまい。温い、温いわ。その隙こそが城を崩壊させるというものを。まぁ、この忍びに毛が生えたばかりの坊ちゃんには分かるまい。まさに、笑止千万__。
「なに笑ってるんですか?」
「いや、中山忍はどこに身を隠したのかなと思って」
「誰です?」
「知らないの?絶大なるアイドルのミポリンコの影に隠れてフェードアウトしていった妹。私、演技はうまいんですオーラが、見るからにくノ一だったけど」
「さっぱり分かりません」
「塚田クン、そんなんじゃモテ忍にはなれないよ」
「結構です。それより早く掃除して下さい‼︎」
「はいはい」
やる気なさげに返事をして、先生は畳を履く。
今日は忍者村、もう一つの名物、からくり館の手伝いだ。
畳替えしや、からくり扉など、歓声ポイントは多い。
「じゃ先生、扉のチェックを」
ボクがそう言うと、箒を放り出して、掛け軸が掛けてある扉に背をピタリとつける。
トンっ。
足で床を蹴ると、扉がひっくり返る。
そして先生は、脇の勝手口から__。
「た、助けてくれ‼︎」