石田先生、忍者になるの巻
ボクは忍者成り立て1年目の新人。そして、断固として池に入りたくないらしいこのオサーンは、議員をやめてまで忍者になりたいという、石田先生。ボクより下っ端なんだけど、初対面からして__。
「君、名前は?」
「あ、ええっと、ボクは塚田雅喜です。これからボクが教育係として、忍びとはなんたるかを__」
「塚田クン、なんで忍者になりたいの?」
「それは__忍びの精神というか、決して目立たないけど、速やかに任務を全うする、静かな闘志といいますか、揺るぎない信念というか__」
「はい不合格」
「え?」
「君、議員秘書の面接なら落ちてるよ。もっとスパッといかないと。ボクの秘書をしていたサッちゃんは面接で(なんか秘書という響きが淫靡だったので)って一発採用だよ」
「はぁ。では石田さんはどうして忍者に?」
「なんかシュッとしてるじゃん」
「はい?」
「全体的にシュッとしてるし」
「シュッっと…」
なんだか、言っていることは分かる気がする。
それからも、どちらが先輩なのか分からない鍛錬の日々が続くが、ここは水遁の術で先輩風を吹かせてもいいだろう。
しかし__。
「ちょっ、なにやってるんですか⁉︎」
「餌」
「餌って、鯉じゃないんだから。それに、それなんですか?」
「これ?」
池に何やら撒いていた先生は、それを掲げて言った。
「これ、ごぼう」