秋麗パラドックス






私たちは学校の校庭にいた。

野球部の部室の裏側。
そこに私たちのタイムカプセルを埋めた。



「奈瑠は何書いたか覚えてる?」

「全然。まあ、ロクでもないこと書いてるよ」

「奈瑠に限ってそんなことないよ」



『逆にあたしがそのパターンよ』と、恥ずかしそうに言う小春。


小春は昔から真剣に考えていそうで、考えていないというような人だった。

進路もギリギリで決めて、確定したのもギリギリ。
何でもギリギリ。

見ていて大丈夫かな、って思ったのは言うまでもないぐらいに。

でも、それでも、彼女は彼女の努力で掴んでいく。
そういう人生だった。


私が『それもそれでいい思い出じゃない』と言えば、『そういう問題じゃないよ』と言う。

そうこう言っている間に、タイムカプセルは掘り出されていた。
そして、私たちのクラスである3年2組のものが入っている封筒を出す。
今日来ている人に順番に渡していく。



「菊池の!で、これが倉木の」

「ありがとう」



手渡されたのは、少し湿っぽい茶色い封筒に“菊池 奈瑠”と書かれたものと、“倉木 小春”と書かれたものだった。

それを小春に渡すと、『ああ…見たくない』と言いながらも、少しずつ開けている姿に少し笑う。





< 11 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop