秋麗パラドックス
私たちは学校の校庭にいた。
野球部の部室の裏側。
そこに私たちのタイムカプセルを埋めた。
「奈瑠は何書いたか覚えてる?」
「全然。まあ、ロクでもないこと書いてるよ」
「奈瑠に限ってそんなことないよ」
『逆にあたしがそのパターンよ』と、恥ずかしそうに言う小春。
小春は昔から真剣に考えていそうで、考えていないというような人だった。
進路もギリギリで決めて、確定したのもギリギリ。
何でもギリギリ。
見ていて大丈夫かな、って思ったのは言うまでもないぐらいに。
でも、それでも、彼女は彼女の努力で掴んでいく。
そういう人生だった。
私が『それもそれでいい思い出じゃない』と言えば、『そういう問題じゃないよ』と言う。
そうこう言っている間に、タイムカプセルは掘り出されていた。
そして、私たちのクラスである3年2組のものが入っている封筒を出す。
今日来ている人に順番に渡していく。
「菊池の!で、これが倉木の」
「ありがとう」
手渡されたのは、少し湿っぽい茶色い封筒に“菊池 奈瑠”と書かれたものと、“倉木 小春”と書かれたものだった。
それを小春に渡すと、『ああ…見たくない』と言いながらも、少しずつ開けている姿に少し笑う。