秋麗パラドックス
夏の終わりを告げる
秋麗か。
紅葉が燃えるように、学校を包み込む。
風に吹かれて落ちていく紅葉。
無言で真っ赤な道を歩いていく。
制服に身を包んだ私。
隣にいる、“彼”も制服を着ていて。
無言でも、重い空気とは言えなくて。
『奈瑠』
『…ねえ、徹。この二年間、楽しかったね』
“彼”が続けようとした言葉を遮って、私は言う。
『…奈瑠』
『私ね、ずっと考えてたんだ』
私には選択肢があった。
私が幸せであるために、“彼”の人生を壊すこと。
“彼”のこれからのために、私が身を引くこと。
その二つの選択肢があった。