秋麗パラドックス
そして、私は私自身に無性に腹が立つ。
あの頃よりも伸びた。
カッコよくなった。
それに加えて、大人の色気が出た。
そんなことが、分かっちゃうんだもの。
気付いちゃうんだもの。
そんな私の身勝手な苛立ちを、彼にぶつける。
「…何で、来たの」
『私は、会いたくなかった』と彼に言った。
すると彼は、少し笑顔を浮かべて、でも、心の中では泣いているような。
そんな顔で、
「…俺は、会いたくて堪らなかった」
―――そう、言った。
ずるいよ。
何でそんな顔するの。
私は、
「勝手なこと言わないで」
「…奈瑠」
勝手なのは私なのに、またも彼に押し付ける。
素直になれない。
なろうとも思わない。
だってまた辛くなるのは、悲しくなるのは、自分だから。
「私たちはあの日、終わったでしょ」
『なのに何で今更…』と言えば、やっぱりまだ、彼は同じ顔をしている。
変わったね、徹。
出会ったころは、そんなに感情を表に出すようなタイプじゃなかったのに。
それに昔は、逆だったよね。
その顔を私が、よくしてた。