秋麗パラドックス
「それに、私がいた方が円滑に話が進むんじゃないかしら?」
『だから徹だって、小春に仲介頼んだんでしょ』と言う萩原さん。
彼女たちの間の話だから、私には分からない話だった。
けれど、その話の中に私がいることは何となく察した。
「彼女、まだ私たちの関係が続いてると思っているみたいよ」
「…は?」
『ちゃんと言ってなかったのね』とそんな声が聞こえた。
今、萩原さん何て言った?
萩原さんの言葉に、徹はもっと驚いていて。
私の方に、萩原さんが向いた。
「菊池さんも意外と新聞見ないのね。驚いたわ」
「…えっと、」
私は一体、どういうことかわからなくて萩原さんを凝視した。
どういうこと?と言わんばかりに。
「単刀直入に言うけれど…私と徹は婚約解消してるから」
萩原さんの言葉に、私は驚いた。
言葉も出なかった。
『婚約を解消している』と確かに萩原さんは言った。
「…どういう、こと?」
信じられなかった。
だって、学生の頃はあんなにベッタリだったのに。
『菊池さんに徹は勿体ないと思うわ』とも言われた。
それなのに、彼女が私のために婚約を取り下げるようなことはしないと思う。