秋麗パラドックス





それに、彼女の指には指輪があるのに。

私の考えが彼女にも分かったのか、『ああ、この指輪のこと?』と言う。




「私、他の人と婚約したの。で、来月には結婚式も挙げる予定よ」

「え?!」

「ニュースにもなったわよ?相手は総理大臣の息子だから」



ニュースにもなったって、…すごい人と私は今話しているんだなと思った。


そう言えば会社の人が何か言っていた気がする。

『病院の院長の娘が、総理大臣の息子と結婚するらしいわよ。婚約者がいたにもかかわらず!本当、より取り見取りな人は羨ましいわ!』と嘆いていたような記憶はある。

まさかそれが、萩原さんのことだっただなんて。



「全く嫌になっちゃうわよね。親の言いなりよ、私」



『父親が総理大臣の手術を担当したって言うだけで、お礼の食事に誘われて、少し会っただけなのに見初められて。それで一気にこの話よ?』


分かるような気がした。
私だって、初めて彼女を見た時にはこんなに綺麗な人がこの世にいるんだと思ったから。

小顔で、一つ一つのパーツがちゃんと整っていて。
綺麗だって。
私が男だったら絶対に好きになるだろうなって思った。
だから、その息子さんに気持ちは私も理解できるような気がする。




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