秋麗パラドックス
けれど萩原さんのその表情には、諦めと悲しみの表情だった。
その表情からも伺えられた。
…萩原さんはきっと、まだ。
私は何も言えなかった。
なのに、どうして私のところに来てるのとも思った。
あの頃の行動力があったら、彼女は無敵だと思う。
なのに、どうしてそれをしないの、とも思った。
「私だってもう大人よ。それに、今まで親には自由にさせてもらったの。…今度は私が助ける番と思ったの」
『で、これはそれの延長戦』と彼女は言った。
けれどやっぱりまだ私には理解ができなかった。
「本当は、小春に頼もうと思ってたの。菊池さんに連絡取ってって。別に同窓会じゃなくてよかったから個人的に会おうって。でも、どっかの誰かさんに取られちゃったのよね」
そう言って萩原さんが見たのは、徹だった。
すると、苦笑いする徹。
「行動が速すぎるのよ。婚約解消してほとぼりが冷めたらすぐよ、すぐ。私に失礼すぎると思わない?」
少し笑いながら言う、萩原さん。
「小春が八神総合病院に就職してることは知ってると思うけれど、あれも徹の陰謀だから」
「おい、優里」
「小春に恩を売って、菊池さんの情報を聞き出そうって言うね」
そんな萩原さんの横で、小春が『黙っててごめん…』と言う。
小春だってこの立ち位置、居づらいに決まってる。
それに、小春とはそんなに連絡も取ってなかった。
だから私は、『全然、気にしてないから』と普通に言った。
「それが、今日の同窓会だったって言うこと?」
私は小春に聞く。
すると、『…そう』とバツが悪そうに言った。
「まあ、そんなことだとは思ってたよ」
『同窓会行かない?』って言われた時からわかってたよ、と言えば、嘘!と彼女は驚いていた。
小春は分かりやすいから、と言えば、ショックを隠せないようで。
『うまくいったと思ってたんだけどなあ』と言った。
それこそ何年の付き合いだと思ってるのよ、と思った。