秋麗パラドックス




「そうよ!そう言えば、何で八神総合病院で働いてること、奈瑠が知ってたの?!」



思い出したように小春は言った。



「ああ、さっき萩原さんが言ってたじゃない?橋下くん」

「…ああ、あの口説かれてるとか言う?」



小春のその言葉に、ピクリと今まで黙っていた徹が反応する。
あ、やばいと反射的に思った。



「まあ、実際には口説かれてないけどね。その橋下くん情報だよ」

「え?」

「橋下くんと出会ったのは別の病院なんだけど、今は八神総合病院に勤めてるの」



私の心の友だよ、と言えば、『…もしかして、橋下 駆【かける】か?』と徹が言う。
それに私は頷く。



「橋下くんってあの橋下くんなの?!」

「小春、仲が良いんだってね」

「そう!よく仕事終わりに飲みに行ったりしてるの…って!」



『よく聞いてるよ』と言えば、『ちょっとあたしより連絡取ってるでしょ!?』と怒る小春。
怒る理由は何となくわかる。
小春はきっと、彼のことが好きなのだ。



「私も相談に乗ってもらったり、偶にご飯に行ったりするの」



『その時にね』と言えば、なるほど、と彼女は納得した。
けれど、「浮気か」と言って納得しなかったのは、他にいた。
―――徹だ。



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