秋麗パラドックス

「浮気じゃないでしょ。別れてるんだし」

「…気に食わない」

「気に食わなくても、そうなの。それに、単純に友達なの」



私が有無を言わせないように言うと、彼も黙る。
すると、『見せつけないでくれる？』と小春や萩原さんが言う。

見せつけてなんかないんですけど、と思いながら、私は黙る。



「徹にも、…あなたにも。たくさん迷惑をかけてしまった。だから、…これはお詫びの気持ちよ」



私がキューピットになってあげる。
彼女はそう言った。

私はやっぱり、彼女の心理が分からない。

だって、あの頃だって、…今だって。
徹が、好きなんでしょ？
今でも、そんな顔をするぐらい、好きなんでしょ？


私は、心境として複雑だった。

正直、喜べない。
あの日で私の中では決着がついていた想い。

…正確には、別れてから数年で、だけれど。


だから、今更『解消したから』と言われてもいまいちピンと来ないのがリアルな気持ちだ。

だって、想っていたって叶わないって思っていたから。
無理やり消した気持ち。
それが、こうして、元凶であった彼女…萩原さんによってもう一度、なんて考えられなかった。