秋麗パラドックス
見ているだけで辛かった。
笑い合う二人を。
私のことなんてもう、どうでもいいみたいに。
好きなのに、一緒に入られなくて、他の女の子と一緒にいる君を。
見たくなくて。
やっと、私の中から消えたのに。
なのに、何で。
「ちゃんと、もう親は説得してある。奈瑠は何も心配しなくていい」
「説得しなきゃ、許してもらえないのに…絶対嫌!」
「奈瑠…!」
「案外強情なのね。根に持つタイプなの?菊池さんって」
「萩原さんだって、そんなの自己満足でしょ?!そっちの都合ばっかり私に押し付けないでよ!」
素直に喜ぶとでも思った?
そんなの、罪滅ぼしなだけでしょう?
おこぼれをもらえるって喜ぶとでも思った?
庶民だからって、見下すのも体外にしてほしい。
いつまでも同じ気持ちだと思わないで。
「お願いだから、かき乱さないで…っ!」
ああ、もう。
やっぱり、来なきゃよかった。
大体、私だってもう子供じゃない。
親の気持ちだって痛いぐらい分かる。
しかも彼は長男だ。
絶対、家柄とかこだわりたいに決まってる。
ちゃんと、私だってわかる。
なのに、私がホイホイ『じゃあ付き合う』なんて言えない。
そんな勇気、私にはない。