秋麗パラドックス
高校時代、徹と別れてからと言うもの、周りから冷ややかな視線をずっと受けてきた。
『恋人を横取りされた可哀想な人』と言うレッテルを張られ、可哀想な目で見られて。
終いには、『俺が慰めてあげる』と迫られて。
二人は常に一緒に行動していて、見るのも辛かったのに、目の前でそんなことをされて。
私の精神状態は極限を越えようとしていた。
毎日泣いてた。
けれど、弟たちの世話で忙しい親には相談もできないし、学校を休むこともできなかった。
そんな私を支えてくれた小春。
そんな私の姿を知っているはずなのに。
信じられなかったんだ。
私は小春に背を向けて、駅に向かう。
すると、
「自分だけが被害者ぶるな!」
小春のそんな声がした。
何を言っているのか、意味が分からなかった。
だから思わず振り返った。
言い返そうとして。
でも、言い返せなかった。
「くよくよするなんて、奈瑠らしくないんだよ!ウザすぎるっつーの!」
そこには、涙をこらえた小春の姿があったから。
「別れを切り出したのも、奈瑠からだったじゃない!身勝手なのは、奈瑠もでしょ?!何度も、八神くんは奈瑠と接触しようとしてたじゃない!なのに、何で自分だけがって思うのよ!」
『奈瑠は、自分が傷つきたくなかっただけでしょ?!』
小春が言ったその言葉たちは、すべて事実で、私が背けていた現実でもあった。
私は逃げた。