秋麗パラドックス
分かってた。
ちゃんと、分かっていたんだ。
徹が、ちゃんと私との未来を考えていてくれたことも、親を説得しようとしていてくれていたと言うことも、別れないでいい道を考えてくれていたことも。
ちゃんと私は知っていた。
でも、それでも、耐えられなかった。
いつか、徹は私を捨てるんじゃないか。
親からしたら、私は疫病神だと思われるんじゃないだろうか。
そう思ったら、私はこの関係を続けようとは思えなくなっていた。
寧ろ、逃げたくて逃げたくて、溜まらなくなっていた。
これ以上、私は一緒にいられないとまで、思っていた。
それは、徹のためと言っておいて、全部、私のためだった。
…最低なのは、徹じゃなくて、萩原さんでも小春なくて、私だ。
それを言いように転換して、自分が犠牲になっている被害者かのようにして。
…本当、私は最低だ。
私の目からは、涙が溢れていた。
辛かったあの日々を、もう繰り返したくない。
そう思うことの何が悪いの。