秋麗パラドックス
「…ちゃんと、話がしたい」
「…分かった」
もう、随分と月日も経ったし、あの頃とはもう違う。
私たちは、大人になったんだ。
体も、中身も。
だから、もう、大人になろう。
私は、『二人きりになれるところが良い』と言うと、彼の車の中に乗り込むように言われて。
正直、都合がよかったから、素直にそのまま乗り込んだ。
先程は気が動転していて、彼のことをあまり見てはいなかったけれど。
…いい男になったと思う。
大人の、男性になった。
あの頃とは違う。
声も少し低くなったし、身長ももっと高くなった。
体つきもスーツを着ていても分かるぐらい、鍛えているのか筋肉質になったし、片幅も広くなった。
凛々しい、大人の男性になっていた。
もう、私が知っている徹じゃなくて。
知らない一人の男性だ。
「…どうして話してくれる気になったんだ?」
『倉木に説得されたのか』と言う徹。
少しムッとしながら、『違うわ。ちゃんと私の意思よ』と言う。
まあ、それが大きいかもしれないけれど。