秋麗パラドックス
「…ちゃんと、話さなきゃと思ったの」
「そうか」
「…信じてないでしょう」
「いいや?」
クスクスと笑いながら徹は否定するものだから、信じられない。
…ああ、あの頃に戻ったみたいだ。
そう思ったのは言うまでもない。
たくさん笑った、あの日々。
まだ付き合ったばかりの頃、他愛もない話でたくさん笑った。
笑いあった日々が、よみがえる。
「私ね、自分から別れを告げておいて何だと思われちゃうかもしれないけれど、徹と萩原さんが二人で一緒にいるのを見るのが嫌だったの」