空の愛し方
 こんなに、愛してしまうなんてな。

 自嘲するように小さく笑った事になど誰も気付かない。

「チッ。」

 舌打ちと共に立ち上がった俺は、さっきとは逆に彼女を見下ろし、睨む。

 先程の事など、すっかり忘れてしまった彼女は笑顔で俺を見上げていた。

「帰る。」

 クルクルと良く動く大きな瞳が見開かれ、次の瞬間、彼女は慌てて立ち上がった。

「私も帰る。みんなバイバイ。」

 ほら、追いかけてきた。

 無言で俺の後ろを歩く彼女。
 振り向かなくても、彼女は笑っている。
 何が嬉しいんだか、笑っている。

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