空の愛し方
何も言わない俺を睨んでいた彼女の目に、見る間に涙が浮かぶ。
「可愛くねぇな。」
呟いた俺と零れた彼女の涙、同時に雨が降り出す。
至近距離から見る彼女の驚いた顔。
口の中に広がる彼女の血の味。
その滴を舐め上げて離れた俺を見上げた彼女は、驚いた顔のまま雨に濡れていた。
「似合わねぇ上に、俺に付くだろ。こんな物、二度と塗って来るな。」
俺は口元を袖で拭くと、そこに付着した血とは別の赤い色に眉間を寄せた。
そして、彼女の口の端に滲んだ鮮血を親指で伸ばしてやる。
「それで充分だ。」
笑った俺を見て、彼女の頬が朱に染まる。