何度だって咲かせよう(仮)
*
(とは言ったものの…)
あれから、京香のノロケ話を散々聞かされ、最後には「絶対チョコ作ってよ〜!」と念を押され別れた。芽依子は帰路に着き、先ほどの話を思い出していた。
(きっと、みんなもあげるんだろうな…なんてったって冬桜の王子だもん。フられてなくのが目に見えてるのに、なんで涼子はあんなに自信満々なんだろう)
冷静になって考えると、やっぱり不安だ。ハーッとため息をついた。
「あれ、藤田?」
芽依子が振り返ると、悠馬がいた。
「桜田くん、司くんと帰ったんじゃないの?」
「あー、今日はバイトでさ」
「バイトしてたんだ。なんか買いたいものでもあるの?」
「ちょっと、な。もう暗いし、家まで送っていく」
そういうと歩き出す悠馬。芽依子が断わろうとすると、「これで藤田が襲われたら気分悪いだろ?」と言われ、大人しく送ってもらうことにした。
(あんな言い方して上手いな…)
話し方は淡々としていて、少しぶっきらぼうに聞こえるときもあるが、よく周りに気を配る悠馬がモテないわけがない。
そこまで考えた芽依子は自分の胸がチクリとしたことに気づいた。そして、この気持ちに嘘はつけないのかもしれないと感じた。
「……藤田はさ、バレンタイン、誰かにあげるのか?」