何度だって咲かせよう(仮)
「…へ?」
思いがけない言葉に立ち止まり、悠馬の顔を見る。芽依子は悠馬の強い瞳に捕らわれ、動けない。
「…どうなの?」
まさか、あなたにあげようか思案してました、なんて答えられず黙っている芽依子に悠馬は近づく。芽依子はおもわず視線を逸らした。
「俺に、俺だけくれよ」
ポツリとつぶやくように放たれた言葉を理解できず、視線を戻す。すると、悠馬はなぜか切なそうな、いまにも泣き出しそうな顔をしていた。
驚いて目を見開けば、まるで見るなとでも言うかのように悠馬に抱きしめられる。
どれくらい経ったのだろうか。自分が緊張していただけで、さほど時間は経っていないように思う。
「悪い、送っていく」
ただ一言、そう言って歩き出そうとした悠馬に芽依子は問いかける。
「桜田くんは、私のことがすきなの?」
悠馬の手がギュッと握られる。フーッと深呼吸した悠馬は、芽依子のほうをむく。
「ああ、すきだ」
夢を見ているんじゃないかと思った。まさか自分が好きな人が自分を好いてくれているなんて。一言を言うのに、すごく緊張した。それでも答えなければならない言葉が、芽依子にはあった。
「私も、すき」