何度だって咲かせよう(仮)

今度は悠馬の瞳が大きく見開かれる番だった。すると、ホッとしたように微笑み芽依子にこう尋ねた。


「付き合ってくれるか?彼女に、なってくれるか?」

「もちろん。私の彼氏になってください」

「…なんか、夢みたいだ」

少し照れくさそうに言う悠馬を見た芽依子は、うれしかった。

「今日はもう帰ろうか」

悠馬はそう言って、左手を差し出す。

(これって…)

おずおずと出す芽依子の右手をそっと掴み、歩き出す。

芽依子にはそれが、なんだか懐かしい感じがした。いつかもこんな風に手をつないで歩いてたかのような。その理由はわからなかった。



決して口数の多い二人ではなかったため沈黙が続くときもあったが、それでも心地よかった。

無事に芽依子の家に着き、悠馬の手を離さなければならないと思ったとき、芽依子は離れがたいと思った。
それを察した悠馬に「明日、また会えるだろ」と言われ、しぶしぶ手を離す。

「送ってくれて、ありがとう。また明日」

「なあ、藤田。迷惑じゃなかったら、朝一緒に学校に行かないか?」

思いがけないお誘い。でも自分の気持ちは伝えたい。

「迷惑なんかじゃない。一緒に行きたい」

満足気な表情の悠馬は、「八時に迎えに来る」と言い帰っていった。



芽依子は悠馬を見送り、家に入った。自分の部屋のベッドに座って、今までのことを思い返す。

(夢じゃないんだよね…)

ふわふわとした気持ちの中、顔の筋肉が緩むのがわかった。まだ胸もドキドキといっている。好きな人と付き合えることがどれだけ幸せなことか、芽依子は改めて実感した。明日からの毎日が、より楽しみだと感じて、目を閉じた。
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